「流山市・柏市・松戸市・野田市」周辺の企業様における人事・労務管理を行う社会保険労務士。内山労務管理事務所
内山事務所通信2012年3月号 職場のパワーハラスメントを定義 【同僚・部下からの嫌がらせも「パワハラ」に】 職場のいじめや嫌がらせなどの問題を議論する厚生労働省のワーキング・グループは、1月30日、「職場のパワーハラスメント」の定義などを示した報告書をまとめました。 同報告書では、同じ職場で働く人に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的、身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為が職場のパワーハラスメントであると明記されました。また、上司から部下に行われるものだけでなく、先輩、後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれるとしています。 また、職場のパワーハラスメントの行為類型として、以下の6つを示しています。 (1)身体的な攻撃(暴行・障害) (2)精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言) (3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視) (4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害) (5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕 事を命じることや仕事を与えないこと) (6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) そして、まず企業として「職場のパワーハラスメントはなくすべき」という方針を明確に打ち出すべきであるとした上で、具体的な取組の例として、予防するために、[①トップのメッセージ②ルールを決める③実態を把握する④教育する⑤周知する。」解決するために[①相談や解決の場を設置する②再発を防止する] を挙げています。
ワーキング・グループでは、この報告をもとにさらに議論を行い、こうした問題の予防・解決に向けた提言を早期に取りまとめる方針です。
(安全・労働衛生)職場の安全&衛生 【リスクアセスメント】リスクアセスメントとは
近頃、よくリスクアセスメントという言葉を聞かれることがあると思います。リスクアセスメントとは、職場の潜在的な危険性・有害性を見つけ出し、これを除去、低減して、労働災害を未然に防ぐための手法のことです。 リスクとは負傷または疾病の重篤度と発生の可能性を組み合わせたもののことです。リスクアセスメントに基づいて対策を行うことにより、確実に、効果的に災害を防止できるとされています。 また、平成18年4月1日以降、リスクアセスメントの実施が法律上、事業者の努力義務になっています。
リスクアセスメントの基本的な手順
リスクアセスメントの基本的な手順は、以下のとおりです。 ①従業員の就業における危険性または有害性について、リスクの見積もり ②特定した全ての危険性または有害性について、リスクの見積もり ③見積もりに基づき、リスクを低減するための優先度の設定 ④リスク提言措置の検討および実施 ⑤リスクアセスメントとリスク提言措置の記録
危険性または有害性の特定
機械・設備、原材料、作業行為や環境などについて危険性・有害性を特定します。ここでの危険性・有害性とは、労働者に負傷や疾病をもたらす物、状況のことで、作業者が接近することにより危険な状態が発生することが想定されるものをいいます。危険性・有害性は「ハザード」ともいわれます。
危険性または有害性ごとのリスクの見積もりのやり方
リスクの見積もりは、特定された危険性・有害性によって生ずるおそれのある負傷・疾病の重篤度と発生可能性の度合いの両者の組み合わせで行います。
リスク低減措置の実施の優先順位
①法令に定められた事項の実施(街頭事項がある場合) ②設計や計画の段階における危険な作業の廃止、変更など ③ガード、インターロック、安全装置の設置などの工学的対策 ④マニュアルの整備、教育訓練などの管理的対策 ⑤個人用保護具の使用
リスクアセスメント導入による効果
技術の進展等により、多種多様な機械設備や化学物質が生産現場で用いられるようになり、その危険性や有害性が多様化してきた昨今、リスクアセスメントの導入が急がれます。そして、その導入により、以下の効果が期待できます。 ①職場のリスクの明確化が図られ、作業者の危険性・有害性のポイントを見る目が養われます。 ②リスクを排除する意識が向上します。 ③各作業工程での危険性・有害性のポイントが明らかになります。 ④リスクアセスメントを通じて、職場内でリスクの排除に関する話し合いが活発になり、リスクに対する共通認識を形成することができます。 ⑤職場全員が参加することにより、危険に対する感受性が強化されます。
(労務管理)トラブル回避の対応術 【限度時間を超える時間外労働はどこまで認められる?】 事例 当社では、毎年定期に36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結していますが、実態をみると、協定の限度時間を超える場合がみられるので、次回から「特別条項付き36協定」に切り替える予定です。この場合、限度時間を超える時間外労働はどこまで認められるのでしょうか?また、締結するにあたって留意すべき点はあるでしょうか? 特別条項付き36協定の延長時間
36協定で定める時間外労働の限度時間は、原則として厚生労働大臣が定めた基準の範囲内でなければなりませんが、臨時的に限度時間を超えてさらに時間外労働を行わせなければならない特別の事情が予想される場合には、特別条項付き36協定を結べば、例外的に限度時間を超えて労働させることができます。 ただし、この場合であっても、原則となる限度時間を超えて労働させることができる時間数についても協定で限度を定めておくことが必要です。この延長時間の限度については基準などは定められてはいませんが、無制限に等しいといえるような延長は、健康管理の観点からも好ましくありませんので、労使間で協議して良識的な範囲で決めておくべきでしょう。 特別条項付き36協定を締結する際の留意点
このほか、特別条項付き36協定を締結するにあたっては、次の点に留意しなければなりません。 ①限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情を定めること。 ※この場合の「特別の事情」とは、臨時的なものであって、全体として1年の半分を超えないことが見込まれ、事情ができるだけ具体的なものであることが必要です。したがって、特に理由を限定せずに、単なる「業務上の必要があるとき」や「業務が繁忙なとき」という事情は臨時的であるとは認められません。 ②特別の事情が生じた場合に、限度時間を超えるに際して労使がとるべき手続きを定めておくこと。 ※事前の協議や通告など、手続きを具体的に定めることが必要です。 ③限度時間を超えることのできる回数を定めること ※1年のうち半分を超えないことが必要です。回数は、一定期間の長さによって異なりますが、一定期間が1ヵ月であれば6回、1週間であれば26回が限度となります ④限度時間を超える時間外労働をできる限り短くするよう努めること。 ⑤限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金の率を定めること。 ※割増賃金の率は、法定の割増賃金率を超える率とするよう努めることとされています。
《特別条項の例》 一定期間における延長時間は、1ヵ月45時間1年360時間とする。 ただし、通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫したときは、労使の協議を経て6回を限度として1ヵ月60時間まで、1年420時間まで延長することができる。 この場合の割増賃金率は、1ヵ月45時間を超えた場合は30%、1年360時間を超えた場合は35%とする。 バックナンバーはこちらから |