「流山市・柏市・松戸市・野田市」周辺の企業様における人事・労務管理を行う社会保険労務士。内山労務管理事務所

内山事務所通信

2012年4月号

労働契約法改正法案要綱を労政審に諮問

 【5年超えれば無期労働契約に転換へ】

 

有期労働契約が5年を超えて反復更新された労働者が申し出た場合に、企業に期間の定めのない労働契約への転換を義務付けることなどを柱とする「労働契約法改正法案要綱」について、2月29日、労働政策審議会に対して諮問が行われました。

同法案要綱では、契約更新の際に6ヶ月以上の「空白期間(クーリング期間)があるときは、空白期間の前の契約期間を通算しないこともあわせて明記。このほかに、合理的な理由などがない場合には雇止めに制限がかかるといった、判例などでみられる「雇止め法理」を定めることなども盛り込まれました。

厚生労働省は、答申を受けたのち改正案を今の通常国会に提出し、来年春の施行を目指しています。

法律案要綱のポイント

1.有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換

◆有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みを導入する。

◆原則として、6ヵ月以上の空白期間(クーリング期間)があるときは、前の契約期間を通算しない。

2.「雇止め法理」の法定化

次の①または②に該当する場合で、労働者からの契約更新の申し込みを拒絶すること(雇止め)が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で申込みを承諾したものとみなされる。

①有期労働契約の反復更新により、実質的に期間の定めのない労働契約と異ならない状態である場合

②有期労働契約の期間満了後も契約が更新されるものと期待することに合理的な理由があると認められる場合

3.期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合理と認められるものであってはならないものとする。

 

(ニュース)高年齢者雇用安定法改正案を閣議決定

  【65歳継続雇用、勧告に従わない企業は公表も】

 

政府は3月9日、「高年齢者雇用安定法改正案」を閣議決定しました。
同改正案には、①継続雇用制度の対象となる高年齢者について、事業主が労使協定で定める基準により対象者を限定できる仕組みを廃止することで、希望者全員の65歳までの安定した雇用確保措置を義務付ける、②継続雇用制度の対象となる高年齢者の雇用確保措置義務に関する勧告に従わない企業名を公表する規定を設ける、④雇用機会の増大の目標の対象となる高年齢者を65歳以上にまで拡大することなどが盛り込まれています。
なお、施行期日は平成25年4月1日とされています。

 

(ニュース)協会けんぽが発表

  【被扶養者の再確認、24年度は実施】

 

全国健康保険協会は平成23年度は東日本大震災の影響で延期・中止となった被扶養者資格の再確認業務を、平成24年度は実施すると発表しました。
次の①、②に該当する人を除いた被扶養者が再確認の対象となっています。
①平成24年4月1日において18歳未満の被扶養者
②平成24年4月1日以降に被扶養者認定を受けた被扶養者

実施の時期はおおむね5月末から7月末までの間で、前回(平成22年度)と同様に、事前に配布される被扶養者調書(異動届と兼用)を提出する方法がとられます。

 

(ニュース)労災保険審査官が不支給決定を取り消し

  【入社2ヵ月後の自殺を労災と認める】

 

大手居酒屋チェーン(東京)の社員だった女性(当時26歳)の自殺をめぐる遺族の労災審査請求で、神奈川労災保険審査官は、遺族の労災申請を不支給とした横須賀労働基準監督署長の決定を取り消し、自殺は長時間労働による精神障害が原因であったとして、労災と認定しました。

女性は横須賀市の店に配属されて調理を担当していましたが、2ヵ月後に飛び降り自殺しました。時間外労働は1ヵ月で約140時間以上で休日を十分取得できる状況ではなく、死亡前には心身の不調を訴える日記をつけていたということです。

 

4月1日から、外来診療でも高額な費用の窓口負担が軽減されます

これまでの高額医療費制度のしくみでは、入院の場合に限り窓口での支払いを自己負担限度額にとどめることができましたが、平成24年4月1日から、外来診療についても、同様の仕組みが導入されます。
入院の場合と同じように70歳未満の人はあらかじめ「限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関の窓口に提示することで、同一の医療機関での同一月の窓口負担が自己負担限度額を超える場合は、窓口での支払いが自己負担限度額までとなります。


(安全・労働衛生)職場の安全&衛生

 【新入社員と安全衛生】

年度の初めに

 

毎年、4月にはピカピカの新入社員が会社に入ってくることが多いと思います。また、4月でなくても新規に社員が入ってくる場合もあると思います。
今回は、このように新規に社員を雇い入れた場合に注意しておくべき安全衛生のポイントについてお話したいと思います。

 

安全衛生ルール

 

新入社員の側からすると、新しい環境に不安を抱えている人も多いと思います。早く会社に慣れて、一人前になりたいと思っていることでしょう。そのためには、まず社員が知らなければならない会社のルールを教えることが大事です。中でも、安全衛生ルールは、これから社員が安心して働いていくために必要不可欠なものと言えます。
安全衛生ルールは、その会社独自のものと一般的なものがありますが、どの会社にも共通する事項は以下のとおりです。

・安全に仕事をすることがよい仕事へつながるので、安全を意識することが安全の第一歩となる(安全の意識化)

・安全衛生は安全衛生ルールを守ることから始める(ルールの遵守)

・事故の原因となる不安全な状態と不安全な行動をなくすことによって事故を防ぐ(事故の防止)。

・普段から健康をチェックして自分の健康を守る職業人としての自覚が大切(健康管理)

・職場はいつもきちんと整理整頓して、清潔な状態を心がける(整理整頓)

 

安全衛生教育

 

安全衛生ルールを身につけさせるためには、安全衛生教育が不可欠です。
そのやり方としては、講義方式やグループ討議方式、そして日常のOJT(実務に携わりながら業務に必要な知識・技術を習得させるもの)等ありますが、以下の点に注意しながら教育することが大事です。
①わからないことがないようにわかるまでやらせる。
②安全作業について、その急所を重点的に教える。
③安全作業については、実際やってみて正しいやり方を覚えさせ、自分のものにさせる。
④頭ではわかっていても、実際はそのとおりにいかないことも少なくないので、繰り返し練習させる。

 

健康診断

 

ところで、新規に社員を雇い入れた場合は、医師による健康診断をすることが労働安全衛生法で義務付けられています。安心して働いてもらうためには、健康状態をチェックしておくことが不可避だからです。
また、健康診断を受診させることにより、新入社員の自分自身の健康に対する意識を高めることになります。その際、健康への自覚を持たせるため、併せて健康教育を実施することも社員の健康の確保にとってより効果的だと言えます。

 

周囲のフォロー

 

このほか、新入社員については、上司や周囲の人が心の面での健康にも気遣ってあげることが大切です。

新入社員は、初めは慣れないところで緊張の連続でしょうから、心身ともに疲れることでしょう。本人が気付かずに、ストレスをためているということもあります。そのような時に周囲が新入社員に声掛け等の心遣いをすることで、緊張がほぐれ、職場に溶け込みやすくなることと思います。

早く一人前になって職場の方々と肩を並べることができるようにするためにも、このような周囲のフォローが大事と言えます。

 

(労務管理)トラブル回避の対応術

 【パート労働者をフルタイム勤務に】

事例

当社では、業務拡大に伴い、現在のパート労働者を活用毎年定期しようと考えています。まずはパート労働者からフルタイムで働ける希望者を募るのですが、当面の対策なので、すぐに正社員に転換することはありません。この場合、留意するべき点はあるでしょうか?


パート労働者の定義とパート労働法

 

「パート労働者」とは、1週間の所定労働時間がその事業所における通常の労働者と比べて短い労働者をいいます。ここでいう通常の労働者とは、いわゆる正社員を指し、その事業所における所定労働時間をフルタイムで勤務する人です。

企業によっては、正社員よりも短い所定労働時間で働く人を、「パート」、「アルバイト」、「嘱託社員」など様々な名称で呼びますが、フルタイム勤務でない労働者は、ひとくくりにするとパート労働者に該当しますので、「パートタイム労働法」の対象となります。

パートタイム労働法は、パート労働者の就業実態を考慮して運用管理の改善に関する措置を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇を確保するために、「職務の内容」、「人材活用の仕組み・運用」、「労働契約期間が無期かどうか」といった就業の実態を表す要素の違いに応じて、賃金やその他の待遇面で一定の措置を講ずることを事業主に求めています。


フルタイムのパート労働者の扱いは

 

企業によっては、社内では「パート」という名称で呼ばれていても、1週間の所定労働時間が正社員と同じ、つまり、フルタイムで勤務するパート労働者がいる場合もありますが、こうしたフルタイムで勤務する「パート」は、基本的にはパートタイム労働法の対象になりません。

しかし、フルタイムのパートといっても、有期雇用契約であったり、賃金が時間給であったり、退職金や賞与がないなど、正社員と異なる処遇もみられ、通常のパート労働者となんら変わらないことが多いので、通常のパート労働者と同じように、法律でもカバーされることが必要だとされています。

そこで、パートタイム労働法における「指針」では、フルタイムで勤務しながら「パート」などと呼ばれる労働者にも法の趣旨が考慮されるべきであることに留意するよう求めています。


フルタイムへの転換における配慮

 

今回のケースでは、当面の業務上の対策として、パート労働者の中からフルタイム勤務の希望者を募るということですが、正社員との均衡のとれた処遇にすることが求められるとともに、将来的に正社員を増員する必要があれば、パート労働者にも応募の機会を与えたり、正社員への転換制度を整備するなど、パートタイム労働法に基づいた配慮が必要となるでしょう。

このほか、フルタイム勤務になれば、労働安全衛生法において義務付けられる健康診断についても、実施対象となる「常時使用する労働者」(※)に該当することもあります。

※次の①、②のいずれの要件も満たす者

①期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、更新により1年以上使用されることが予定されている者。

②その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。


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