2013年1月号
(ニュース)大卒は前年同期を3.2%上回る
【25年春卒業者の就職内定率、やや改善】
厚生労働省と文部科学省が実施した平成24年10月1日現在の就職内定状況の調査によると、25年春に卒業を予定している大学生の内定率は、前年同期を3.2ポイント上回る63.1%となったことがわかりました。男女別では、男子は1.3%ポイント増の63.0%、女子は5.5ポイント増の63.2%となっています。
このほか、短大卒予定者(女子学生のみを対象)は27.4%(前年同期比4.7ポイント増)、高等専門学校卒予定者(男子学生のみを対象)は96.2%(同2.3ポイント増)専修学校卒予定者(専門課程)は42.6%(同2.4ポイント増)といずれも前年同期を上回っており、ここ数年抑え気味であった企業側の新卒採用の取り組みが、再び活発化していることがうかがえます
(ニュース)24年の「障害者雇用状況」
【障害者雇用率1.69%、過去最高を更新】
厚生労働省はこのほど、平成24年の「障害者雇用状況」の集計結果を取りまとめました。
6月1日現在での民間企業の雇用障害者数は382,363.5人で、前年より4.4%(16,164.5人)増加。実雇用率は1.69%で0.04ポイント上昇し、いずれも過去最高を更新しました。
また、1.8%の法定雇用率を達成している企業の割合は46.8%で、これも前年より1.5ポイントの上昇となっています。
産業別の実雇用率では、「医療,福祉」(1.98%)、「生活関連サービス業,娯楽業」(1.94%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(1.87%)、「製造業」(1.81%)の4業種で法定雇用率を上回っています。
なお、法定雇用率は平成25年4月1日に改定されることになっており、民間企業の場合は1.8%から2.0%に引き上げられます。
(ニュース)25年10月から年金引き下げへ
【「年金減額法」が成立】
本来より2.5%高くなっている特例的な年金額の水準を適正化することを柱とする「国民年金法改正法」が11月16日参議院で可決、成立しました。
同改正法の成立により、年金の水準が平成25年10月分から1%、26年4月分から1%、27年4月分から0.5%と、段階的に引き下げられることになります。
また、低所得の年金受給者に月額最大5,000円の現金を支給する「年金生活者支援給付金法」も成立しました。
(ニュース)24年の初任給調査結果
【大卒初任給、1.2%減少】
厚生労働省の発表によると、平成24年6月末日現在で雇用している新規学卒者の初任給は、男女計で大学卒19万9,600円、高校卒15万7,900円などとなっています。大学卒は前年(20万2,000円)と比べて1.2%のマイナス、高校卒(前年15万6,500円)は0.9%のプラスとなりました。
このほか、大学院修士課程修了は22万6,100円(対前年比3.6%減)、高専・短大卒は17万100円(同1.4%減)といずれも前年より減少しています。
(安全・労働衛生)
職場の安全&衛生
【安全祈願と安全神話】
【安全祈願】
年始は、新しい1年を無事に過ごすことができるよう安全祈願をされる方も多いと思います。また、労働災害が多い建設業や製造業の会社では、社員総出で年頭に神社仏閣へ安全祈願に行くところもあります。労働災害は絶えず発生する危険があり、日夜それと戦わなければならないので、それに対処するためには神頼みをしたくなるのが人間の心理なのだと思います。このように祈ることを通じて安全に向き合うことは、安全を遂行していく上でもよい契機になると思います。
しかし、今回は、本来神の領域であるにもかかわらず、人が勝手に神話を作り、それによりかえって安全が守れなっくなった事案を紹介して、安全についての警鐘としたいと思います。
【作られた安全神話】
それは、東海村臨界事故事件判決です(水戸地判平15.3.3)。事故は、核燃料加工業者が茨城県東海村に有している東海事業所における核燃料加工工程で、核分裂反応が連鎖的に起きる臨界が発生し、作業員2名が中性子線等の放射線を浴びて急性放射線症となって死亡したというものです。
この事故では、事業所長、製造部長など6名が業務上過失致死罪で起訴され、事業所長、製造部長、計画グループ長の3名と会社が原子炉等規制法違反で起訴されたほか、事業所長と会社は、労働安全衛生法の安全管理体制違反でも起訴され、いずれにも有罪判決が出されています。
裁判所は、労働安全衛生法違反の部分について、事業所長が安全管理者である製造部長に、労働者に対して核燃料物質の加工工程における臨界についての安全教育を実施させなかったことで、安全に係る技術的事項を管理させなかったと判断しています。
その上で、会社の安全衛生教育について、「安全管理者らから作業員らに対し保安上必要な指示・監督がなされることはほとんどなく、また、臨海等に関する全体的な教育訓練はほとんど実施されていなかった上、各現場における実地教育においても系統立てた臨界教育はなされておらず、さらに、ここの作業員の能力や知識について検証する手だても講じられていなかった。本件労働安全衛生法違反の事実は、このような被告人会社における長年にわたる安全軽視の姿勢の現れといえる。」
さらに、「この臨界教育軽視の風潮が、臨海に対する意識を低下させ、東海事業所においては臨界ははっせいしないとの『神話』を作り上げ、最終的には末端の作業員から幹部に至るまで、臨界事故発生の危険性についてほとんど意識しないまま日常の職務に当たるような状態になり、本件臨界事故を招来するに至ったというのであるから、被告人会社の労働安全衛生法違反の責任も重大というほかない。」としています
【心引き締めて新年を】
この厳しい判決分から、人間の弱さと安全の継続の難しさが分かると思います。やはり、年の始めに心を引き締めて安全に向き合い、それを年間全うするという強い意志を持ち続けることができるよう神仏に祈り、誓うことが安全祈願を意味あるものにするのではないでしょうか。
(労務管理)トラブル回避の対応術
【育児休業中の年休付与は必要か】
事例
育児休業から復帰した女性社員に年次有給休暇の残日数を質問されたので回答したところ、「それは間違っていませんか?」と言われました。法定の産前休暇開始日より連続して約1年2ヵ月休んでいて、その間に年次有給休暇の定期付与日がありましたが、休業中でしたので付与しませんでした。この扱いは問題があるのでしょうか?
「出勤率」の算定における休業の扱い
労働基準法(第39条)では、年次有給休暇(年休)の付与について「全労働日の8割以上出勤」という要件を定めています。したがって、この出勤率を算定する期間(採用日から6ヵ月間、その後は1年間)において、全労働日数に対する出勤日数の割合が8割以上であれば、勤続年数に応じた日数分の新たな年休が発生することになります。
この「全労働日」とは、労働契約のうえで労働義務が課されている日(いわゆる所定労働日)をいいますので、休日労働があってもその日は全労働日に含まれません。
出勤率の算定にあたっては、労働者が正当な理由で休んだ日を単純に欠勤として扱うと、出勤率が基準を下回ってしまい年休が発生しなくなるという不利な事態になることもあるので、労基法では、次の期間については、「出勤したものとみなす」と定めています。
①労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
②育児・介護休業法に定める育児休業、介護休業をした期間
③労働基準法に定める産前・産後の休業をした期間
これら以外に、行政解釈では、年休を取った日についても出勤したものとして取扱うことが必要とされています。
一方で、就業規則などで独自に定める慶弔休暇や特別休暇などについては、出勤とみなすべきだとする法令の定めはありません。
しかし、8割以上の出勤率を条件としたのは、とくに出勤率の低い労働者を除外するという趣旨であって、正当な手続きにより出勤の義務を免除されている日を勤務成績が不良の評価を受けるような欠勤と同様に取り扱うことは妥当ではないとして、出勤率の算定にあたっては、むしろ全労働日から除外するほうが適切であると解されています。
「休業終了時に年休を加算」
今回のケースでは、出勤率の算定にあたっては法定の産前・産後休暇と育児休業を出勤とみなして扱わなければなりませんので、算定した出勤率が結果的に8割を超えていれば、休業中であっても付与の基準日に新しい年休が発生することになります。
ただし、育児休業期間中の所定労働日は、もともと労働者からの申出に基づいて出勤が免除されている日なので、年休を行使する余地はないものといえます。したがって実務上は、休業終了時に所定の日数分の年休を加算することでも差し支えありません。