「流山市・柏市・松戸市・野田市」周辺の企業様における人事・労務管理を行う社会保険労務士。内山労務管理事務所

内山事務所通信

2012年8月号


暑 中 お 見 舞 い 申 し 上 げ ま す


パートの差別禁止規定から、「無期契約」の要件を削除へ

 【パートの差別禁止規定から、「無期契約」の要件を削除へ】

今後のパートタイム労働対策について検討している労働政策審議会の分科会は、職務の内容、長期的な人材活用の仕組みや運用などが通常の労働者と同一であって、雇用期間の定めがないパートタイム労働者に対する差別的取扱いを禁止しているパートタイム労働法の規定について、このうちの「無期契約」の要件を削除することが適当であるなどとした建議を行いました。同法では、これらの要件を満たすパートタイム労働者は通常の労働者と就業の実態が同じと判断され、賃金の決定や教育訓練の実施、福利厚生施設の利用などすべての待遇において、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことを禁止しています。しかし、雇用期間の定めがあることを理由とする不合理な労働条件の禁止等を内容とする「改正労働契約法案」や、パートタイム労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大の措置を含む「改正国民年金法案」が国会に提出されている状況の下で、パートタイム労働者のさらなる均衡待遇を目指していくことが求められることから、所要の措置を講ずることが適当であるとしています。厚生労働省は、建議を踏まえ、パートタイム労働法の改正などに向けた準備を進めていくこととしています。


雇用保険の基本手当当日額等を引き下げ

雇用保険の基本手当日額の最高・最低額や高年齢雇用継続給付の支給限度額などが8月1日から変更されます。今回の主な変更内容は次のとおりです。
■基本手当日額の最高額及び最低額等の引下げ
(例)受給資格に係る離職の日における年齢が45歳以上60歳未満の場合
最高額7,890円 → 7,870円
※中小企業緊急雇用安定助成金や雇用調整情勢禁において、休業1日(1人)あたりの助成金額の限度額にも適用されます。
■高年齢雇用継続給付の支給限度額の引き下げ
(1ヵ月)344,209円 → 343,396円


(ニュース)平成24年度10月から2段階で

  【雇調金等の支給限度日数を縮小】


厚生労働省は7月6日、雇用調整助成金および中小企業緊急雇用安定助成金の休業等に係る支給限度日数を縮小することを内容とした雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案を公表しました。

それによると、まず、平成24年10月1日からは、1年間の支給限度日数を100日とする改正を実施。翌年の25年10月1日からは、3年間の支給限度日数を現行の300日から150日とする改正を行うこととしています。

なお、岩手県、宮城県または福島県の区域内に所在する事業所の事業主については、それぞれの改正が6ヵ月遅れで実施されます。


(ニュース)23年度は過去最低

  【国民年金保険料の納付率58.6%】


厚生労働省と日本年金機構がまとめた国民年金保険料の納付状況によると、平成23年度の納付率は58.6%で、前年度より0.7ポイント減少し、過去最低となったことがわかりました。

過去分の納付が可能な2年賀過ぎて確定した平成21年度分の最終納付率も65.3%で、最終納付率の統計を始めた平成14年度分以降では最低の水準となっています。

納付率低下の要因としては、納付率の高い高年齢者の割合が低下したこと、収納事業の一部を民間に委託する「市場化テスト」における対策が十分な効果を上げられなかったこと、第3号被保険者の不整合記録問題への対応などが考えられています。


(ニュース)企業倒産件数の減少が要因

  【未払賃金の立替払、件数・金額とも減少】


厚生労働省はこのほど、国が行っている未払い賃金立替払事業の平成23年度の実施状況を取りまとめました。

立替払事業が実施された企業数は3,682件で、前年度と比べて5.1%減少。支給者数は4万2,637人(同16.0%減)、立替払額は199億5,106万円(同19.4%)で、いずれも前年度を下回りました。東日本大震災の影響が一部では残っているものの、景気は全体として緩やかに持ち直し、全国の企業倒産件数が前年度を下回ったことなどが要因とみられています。


(ニュース)年金制度改革関連法案が衆議院を通過

  【パートの適用拡大、8万8,000以上に修正】


「社会保障と税の一体改革」の一環として消費増税法案などとあわせて国会に提出されていた「国民年金法等の一部を改正する法律案」が6月26日に衆議院で可決され、参議院に送られました。

短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大については、当初の政府案で月額賃金が[7万8,000円以上」となっていた基準が、民主、自民、公明の3党協議によって「8万8,000円以上」に修正されています。

衆議院を通過したことにより同法案は、今の通常国会の会期中に成立する見通しとなりました。


(安全・労働衛生)職場の安全&衛生

 【衛生管理者・4つの職務】

衛生管理者と健康管理


衛生管理者は、労働者の健康管理が注目される昨今、職場の健康推進スタッフとして注目を浴びています。

この衛星管理者は、4つの職務を行うこととされています。今回はこの職務を見ていきたいと思います。

【職務① 健康障害の防止】

もし、職場で健康に異常のある人がいるなら、まずそのような人を発見し処置することが大事です。そして、作業環境に問題があればその調査をして、その結果、作業条件や施設を改善していくことが必要です。これは、衛生管理者が行うことになっています。

このような職務を行うためには職場の状況を知らなければならないので、衛生管理者には、職場を少なくとも毎週1回見て回る(巡視)することが義務づけられています。

また、防じんマスク等の労働衛生保護具や救急用具等が揃っているかどうかの点検を行うことも健康障害を防止するための職務です。

【職務② 労働衛生教育】

労働者に労働衛生の基準を守ってもらうためには、そのための教育が欠かせません。衛生管理者はまさに実施主体となって各職場において教育したり、各職場で行われる教育の指導や手助けをすることが必要です。せっかく会社に防じんマスク等の保護具があっても、その作業の危険性を十分理解していない労働者は着用しない場合があります。ですので、労働者にしっかりその危険性を教育して、自ら着用するようにさせることが必要となってくるのです。

【職務③ 健康の保持増進】

今日ほど労働者の心身の健康が問題となっているときはありません。マスコミでももっとも多く取り上げられる問題の一つです。これを進めていく場合に、医学的専門知識も必要になると思います。そのためにはまず、自ら勉強することと、産業医とも連携して、適切な対策が打てるようにすることが必要です。

近年、特に労働者のメンタル不全が増え、精神障害に係る労災請求も増加しています。このような心の健康についても、健康相談等を通して対応していく必要があります。

【職務④ 健康の保持増進】

もし、過重労働等で労働者が疾病にかかったりした場合や有機溶剤中毒等の労働災害が発生した場合は、その原因の調査や再発防止対策を立てるのも衛生管理者の職務です。

今後同種の災害を発生させないためにはどうしたらよいか、十分検討して対策を立て職場に周知することが必要です。


見直しも必要


今注目されている衛生管理者については、前記の4つの職務が各職場で理解されているか、また実行されているか、一度見直すことも必要でしょう。


(労務管理)トラブル回避の対応術

 【賞与で制裁による減給はできるか】

事例

当社は就業規則に制裁を定めていますが、このほど減給の処分を受けた社員から、減給する場合は、次から給与ではなく賞与からしてほしいと言われました。
このような扱いはできるのでしょうか。できるとすれば、査定での減額とあわせて行うことも可能でしょうか?


制裁による減給の制限


労働者の服務規律違反などに対しては、就業規則に基づく制裁を行うことはできますが、減給の制裁は、1回の事案に対する減給額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、また、複数の事案がある場合にも減給の総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならないとされています。(労働基準法第91条)

また、制裁として賞与を減額することは禁止されていないので、毎月支払われる賃金と同じように前述の制限の範囲で減額することはできます。この場合、複数事案に対する減給は「賞与総額」の10分の1を超えない範囲であることが必要です。


制裁か考課・査定か


毎月支払われる賃金と異なり、賞与には収益の分配や功労に対する報償といった不確定要素も含まれていますので、制裁に限らず、使用者の裁量の範囲で行われる効果や査定によって評価が低くなり、結果として支給額が減ることもあり得ます。

あくまでも考課・査定により賞与の支給額が減額されることについては、減給の制裁に当たらないとする見方もありますが、制裁処分の対象となった労働者に対しては一律に賞与を支給しないこととするような扱いは、裁量における考課・査定の枠を超えており、減給の制限に違反し無効とされた裁判例もあります。

1回の賞与で制裁と考課・査定を同時に行って減額することも可能ですが、違反行為の程度と評価の基準との関係で、適正かつ合理的に行われることが大切だと言えるでしょう。その場合は、まず考課・査定による支給額を決めてから、制限の範囲内で制裁による減額を行うことになります。


就業規則などの整備


トラブルにならないように賞与で減額を行うためには、就業規則で制裁に関する規定があるだけでは不十分ですので、賞与の支給基準に関する事項にも制裁による減額やその具体的な方法などに関して定めておくとともに、実際に制裁による減額を行った場合には、支給明細書などでその額が明らかになるよう配慮する必要があるでしょう。



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