「流山市・柏市・松戸市・野田市」周辺の企業様における人事・労務管理を行う社会保険労務士。内山労務管理事務所

内山事務所通信

2012年10月号

スローガン

 【心とからだの健康チェック みんなで進める健康管理】

全国労働衛生週間(平成24年度10月1日~10月7日)

今年で63回目を迎える全国労働衛生週間は、10月1日から7日までの1週間にわたって実施されます。
 業務上疾病による被災者は長期的には減少してきたものの、印刷業での胆管がんの発生が問題となるなど、職場での健康リスクは依然として存在しています。また、メンタルヘルス上の理由により休業または退職する労働者が少なからずいること、精神障害等による労災認定件数が高い水準で推移していること等から、職場におけるメンタルヘルス対策の取組みが重要な課題となっています。
 これを踏まえ、労働者自身のほか、職場のトップ、管理監督者、産業保健スタッフが一丸となって健康管理を進め、労働者の心とからだの健康が確保された職場の実現を目指すことが重要です。
 このような観点から、左記スローガンの下、事業場における労働衛生意識の高揚とともに、自主的な労働衛生管理活動の一層の促進を図ることとされています。

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(ニュース)地域別最低賃金の答申状況

  【全国平均で12円の引上げ】


平成24年度地域別最低賃金の改正について、9月10日までに、各都道府県の地方最低賃金審議会の答申状況がまとまりました。
 それによると、すべての都道府県で時間額が5円から14円の間での引上げとなっており、全国の加重平均額は、昨年度と比べて12円アップの749円となっています。


(ニュース)来年4月1日施行

  【改正高年齢者雇用安定法が成立】


「改正高年齢者雇用安定法」が8月29日、参議院本会議で可決、成立し、9月5日公布されました。
 継続雇用制度の対象となる高年齢者を労使協定で定めた基準により限定できる現行の仕組みが廃止されることで、希望者全員を65歳まで継続雇用することが事業主に義務付けられます。ただし、提出時の法案が衆議院で修正され、心身の故障のために業務の遂行に堪えない者などの継続雇用制度の取扱いに関しては、今後指針で示すこととしています。
 また、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に引き上げられる措置にあわせて、改正法施工時にすでに講じている対象者の基準については、年金の支給開始年齢に連動して、その効力を維持できるという経過措置も設けられています。
改正法は、平成25年4月1日より施行されます。


(ニュース)長野地裁「代議員の議決・承認は不要」

  【厚生年金基金からの脱退を認める】


厚生年金基金の加入事業所(長野市)が基金からの脱退を求めた訴訟で、長野地裁は8月24日、「やむを得ない事由がある場合、脱退員には代議員会の議決や承認は不要」とし、脱退を認めました。
 判決で裁判長は、公的性格を有する厚年基金の「脱退は代議員会の議決を必要とする」という規約の合理性を認めた上で、同基金が23億円超の使途不明金を出していることを重くみて「原告の企業が基金に対して信を置くことができないと判断したのも無理はなく、やむを得ない事由があるというべきだ」と判断しました。


(安全・労働衛生)職場の安全&衛生

 【M S D S】

職 業 病


現在、印刷工場で働いていた人に胆管がんが多発していることが問題となっています。遺族の方が労災申請していて、厚生労働省は印刷機の洗浄に使われていた化学物質(1,2-ジクロロパンとジクロロメタン)との因果関係について調査を実施しています。
 この問題では、結論はまだ出ていませんが、業務に起因して疾病が発生すると、それは職業病と呼ばれます。今回はすでに因果関係が明らかになっている職業病の歴史を見て、労働者の健康を守るためにはどうすればよいかを考えたいと思います。


ヘップサンダルとベンゼン中毒


職業病としてはじめて大きく社会問題化したのは、ヘップサンダルの製造者についてでした。昭和29年に上映されたオードリー・ヘップバーンの代表映画「ローマの休日」がヒットして、映画の中でヘップバーンが履いていたサンダルが流行となりました。このサンダルは下町の家内工業で製造されていましたが、昭和33年、これを製造していた内職者たちにベンゼン中毒が多発し、翌年には死亡者が発生しました。
 サンダルの裏底を接着するゴムのりに有害性の高いベンゼンが含有されていることを知らずに、内職者たちは高濃度の蒸気を吸い続けベンゼン中毒に罹患したものです。
 労働省は、この事態を重く見て、昭和34年11月にベンゼンを含有するゴムのりの製造、販売、輸入、使用を禁止する省令を交付しました。


M S D S の活用を


そこで、頼りになるのがMSDSです。労働安全衛生法では、有害性や危険性がある物質については、メーカーや販売業者が販売したり提供するときにその物質の取扱い上の注意事項等を記載した文書、すなわち化学物質等安全データシート(MSDS)を作成・交付することを義務付けています。
 ですので、各職場では安全衛生教育の一環として、MSDSを活用して作業者が自分の取り扱っている物質の有害性を適正に把握することを進めてみてはどうでしょうか。このようにして、作業者の意識を高めることが安全作業の第一歩となると思います。


(労務管理)トラブル回避の対応術

 【私生活上の行為で懲戒ができるか】

事例

最近の報道によると、会社員や公務員に私生活上の不祥事があると、当事者が解雇や免職となるケースがよくあるようです。
 当社の就業規則でこれに関連する部分を確認したところ、懲戒の事由に「会社の信用、名誉を著しく傷つけたとき」という定めがありますが、この定めだけで実際に解雇などの懲戒処分ができるのでしょうか?



私生活上の非違行為に対する原則的な扱い


労働者が就業時間以外で、かつ会社の施設以外で行ったことは、あくまでも私生活上の行為であって、それが社会のルールや法律に反した行為であっても、社会のルールや法律に基づいて民事上や刑事上の責任を負うことになるので、原則的には、会社が当人を懲戒処分の対象とすることはできないとされています。


例外的な扱いは


しかし、労働者の私生活上の行為が企業活動の円滑な運営に支障を及ぼすものである場合や、会社の名誉、信用その他の社会的な評価に重大な悪影響を与えるような場合には、その行為に対して会社の規制を及ぼすことは可能とする判例もあるなど、場合によっては懲戒処分が認められることもあります。
 会社の懲戒事由の定めに基づく処分に対する提訴をめぐる判例では、労働者の行為が「会社の体面を著しく汚した」というためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・様態・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針およびその労働者の会社における地位・職種など諸般の事情から総合的に判断して、労働者の行為により会社の社会的評価に及ぼす影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならないとされています。
 懲戒解雇が認められたものでは、鉄道会社の従業員が電車内で痴漢行為を繰り返し、職務上の立場において倫理規範に反する行為であるとされたケースがあります。
 一方、懲戒解雇が無効とされたものとしては、工場作業員が酩酊して深夜に他人の住居に侵入して逮捕されたものの、僅かな罰金だけで済んだことや、社内において職務上指導的な地位にはなかったことなど諸事情を勘案して、会社の体面を著しく汚したと評価するには当たらないとされたケースがあります。


懲戒事由と運用


懲戒の事由に「会社の信用、名誉を著しく傷つけたとき」と定めることはよくみられますが、労働者の私生活上の非違行為をこれに当てはめ、実際に懲戒解雇することが認められるかどうかは、こうした判例などに基づいて、行為そのものだけではなく、会社の社会的な評価への影響や会社の諸事情などが総合的に勘案されることになります。
したがって、私生活上の非違行為があった場合に処分を行うときは、慎重な姿勢で臨むことが必要となります。



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