「流山市・柏市・松戸市・野田市」周辺の企業様における人事・労務管理を行う社会保険労務士。内山労務管理事務所

内山事務所通信

2012年11月号


改正労働契約法関連の政省令案を答申

 【有期契約更新の基準、明示を労基法施行規則規則で義務化】

労働政策審議会は10月10日、今年8月10日に公布された改正労働契約法に関連して、無期労働契約への転換などの主要改正部分の施行日を平成25年4月1日とする政令案要綱、労働契約期間の通算に関する基準を定める省令案要綱、および労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱などについて、妥当とする答申を行いました。
 有期労働契約に関して、労働者に明示しなければならない労働条件として、労働基準法施行規則第5条に「労働契約の期間に関する事項」がありますが、更新する場合の判断基準については、厚生労働省の告示(有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準)に定めがあるだけでした。今回の省令案要綱はそれを基準法の施行規則にいわば「格上げ」させることで、その実効性を高めることが狙いとなっています。
 また、改正労働契約法では、反復更新されて通算5年を超えた有期契約労働者が申し込んだ場合に無期労働契約への転換を義務付けることに関して、一つの有期労働契約と次の有期労働契約の間に原則として6ヵ月以上の無契約の期間(空白期間)がある場合は、空白期間は、その前の労働契約期間の「2分の1」を基礎として厚生労働省令で定める期間以上であれば、それ以前の有期労働契約はカウントに含めないことになっていますが、今回の省令案要綱では、その具体的な計算方法が示されています。


11月は労働保険適用促進強化期間

厚生労働省では、労働保険(雇用保険・労災保険)の加入を一層促進していくため、11月を「労働保険適用促進強化期間」として設定し、全国的に労働保険の適用促進の広報活動や未加入事業場に対する適用促進指導等の事業を広く展開しております。
  ハローワーク(公共職業安定所)・労働基準監督署


(ニュース)厚労省の特別対策本部で検討

 【厚生年金基金制度を廃止の方向へ】


厚生労働省は、厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部において、今後の検討事項に厚生年金基金の廃止を含めることを盛り込みました。
 厚生年金基金は、公的年金である厚生年金の一部(代行部分)と、企業が独自に上乗せした年金をあわせて運用していますが、運用状況の悪化で代行部分の積立金が不足する基金が続出したため、代行部分を持つことによるリスクが高まり、制度の廃止論が浮上していました。
 こうしたことから、確定拠出年金など他の企業年金制度の普及・定着や、被用者年金の一元化の流れを受け、他の企業年金制度への移行を促進しつつ、一定の経過期間をおいて廃止する方針を確認しました。
 同省では、新たに専門委員会を設置して廃止に関する具体的な方法について詳細を検討し、来年の通常国会への関連法案の提出を目指しています。


(ニュース)心身の故障、勤務状況の不良などの具体的自由

  【就業規則に定めれば継続雇用の除外を可能に】


労働政策審議会の部会は10月2日、希望者全員の65歳までの継続雇用義務化を柱とする改正高年齢雇用安定法(来年4月1日から施行)について、成立前に修正された「継続雇用制度の取扱いに関する事項について指針で定める」という部分を受けて、「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針案」の概要を提示しました。
 同指針案では、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないことなど、就業規則に定める解雇事由または退職事由に該当する場合には、継続雇用しないことができるとしています。
 また、就業規則に定める解雇事由または退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできるとしました。
 同省では、意見公募などを行った上で改正法施行に合わせて、新しい指針を示すことにしています。


(ニュース)民間給与実態統計調査

  【平均給与、年3万円減少】


国税庁が発表した民間給与実態統計調査によると、平成23年に民間企業に1年を通じて勤務した人(4,566万人)が1年間に得た給与の平均は409万円で、前年に比べて3万円(0.7%)減少したことが分りました。
 男女別の平均給与は、男性が504万円(前年比0.7%減)、女性が268万円(同0.5%減)となっています。


職場のパワハラ対策に役立つポータルサイトが開設されました

厚生労働省では、職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けたポータルサイト「みんなでなくそう!職場のパワーハラスメント あかるい職場応援団」を開設し、パワーハラスメントの概念や、職場での取り組みの必要性について説明しています。
また、パワーハラスメント対策に取り組んでいる企業の紹介や、部下への厳しい注意指導などが裁判ではどう扱われるかといった裁判例の解説なども掲載されています。
アクセスはこちら
 →http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/


(安全・労働衛生)

職場の安全&衛生

【減らない転倒災害】


【事故のトップとなった転倒災害】

事故の型別による労働災害についてみると、「転倒」は平成17年から「墜落・転落」を抜いてトップになっています。直近の平成23年の統計でも、全労働災害の21%を占めています。中には、死亡や重度の後遺症が発生する重篤な結果となる場合もあります。
 転倒災害は、いつでも・どこでも・誰にでも発生するため、「ちょっと転んだだけ」「急いでいたため」と言って軽視されがちです。そのため、十分な対策もなされないことから、定期健康診断や有害業務従事者に対する特殊健康診断は、労働安全衛生法で事業者の義務とされていますが、今回は、その結果得られる労働者の健康情報の取扱いの注意点について説明したいと思います。


【労働者の高齢化と転倒災害】

転倒災害が減らない原因として、労働者の高齢化も考えられます。転倒は年齢とともに増加する傾向がみられ、20歳代に比べると50歳以上の労働者では、約7倍の死傷者数となっています。この加齢によるさまざまな身体機能の低下が関連していると言えます。
その中でも平行機能の低下は顕著で、20歳代を100%とすると50歳代ではその48%にまで低下しています。また、視力においても、薄明順応(暗い所に入った際に、より早く暗さに順応して物が見えるようになる能力)も36%に減少しています。
ここから、高年齢の労働者は、ふらつきやすく、段差や階段などの認識において特に注意が必要であると言えます。


【事故を起こさないための対策】

そこで、各職場で転倒災害を防止していくために以下の取組みを実施することをお勧めします。
 まず第1に通路や床面の4S(整理・整頓・清潔・清掃)を徹底することです。4Sは安全作業の基本ですが、転倒災害についても効果的な対策と言えます。 第2に、段差の解消です。特に、身体機能の衰えた高年齢の労働者対策として有効な対策と言えます。
 第3に、照度の改善です。節電ということで証明を落としている所もありますが、適切な証明は確保することが大切です。
 第4に、通路や床を滑り防止材質にしたり、滑り防止塗料を使用することも可能な限り実施してみてはいかがでしょうか。
 第5に、作業靴は、耐滑性の高いものを使用するよう心がけましょう。女性の高いヒール靴もバランスを崩しやすいので、仕事の際は見直しも必要です。
 第6に、バランスや敏捷性などの運動機能を高める体操などを定期的に実施することも有効です。すべらない・つまずかない身体づくりということです。
 このような対策を実施して、職場のどこでも起こり得る転倒災害を少しでも減らしていくことが大切と言えます。


(労務管理)トラブル回避の対応術

 【従業員が裁判員に選ばれたら】

事例

当社の従業員がこのほど裁判員に選ばれて、数日間裁判に出席するようにという通知を受けたそうですが、出席を認めなければならないのでしょうか?
 当社の就業規則には裁判員になった場合の定めがなく、公民権行使や公の職務の執行などによる休職(無給)の定めがあるだけですが、必要な休みが数日程度なので本人が年次有給休暇を充てることを申し出た場合、これも認めなければならないのでしょうか?


裁判員は公の職務


裁判員制度がストートして3年が経過し、自社の従業員が裁判員に選ばれるケースも出てくるでしょう。
 従業員から、実際に公判への専任手続きや公判に出席するために必要な休みを取ることを請求された場合、労働基準法(第7条)に定める「公の職務の執行」の範囲にあたるものとされていますので、使用者はこれを拒むことはできないことになります。ただし、公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻については変更することはできるとされています。
 また、裁判員で仕事を休んだことを理由に解雇などの不利益な扱いをすることは禁止されています。(裁判員法第100条)


賃金の扱い


裁判員を理由とした休暇について有給とするか無給とするかは、使用者の判断に委ねられていますが、少なくとも就業規則や賃金規程などにその扱いを定めておくことは必要です。ただし、公民権行使や公の職務の執行による休暇とその場合の賃金の扱いを定めていれば、裁判員の休暇にも準用できるものとされています。


年休の申し出があった場合


裁判員などの公の職務で休む日は無給の扱いとしている場合、従業員から年次有給休暇を充てたいという申し出があることも考えられます。年次有給休暇は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、使用者が取得の時季を変更することはできないことになっています。


賃金と日当との関係


裁判員や裁判員候補者になって実際に裁判所に行った場合は、日当や旅費(交通費)などが支払われます。したがって、年次有給休暇を充てる場合、裁判員として受け取る日当と会社からの賃金の両方を受けることになります。
裁判員の日当は、裁判員としての職務などを遂行することによる経済的な損失(例えば、子供を預けるための保育料や裁判所に行くために要した諸雑費など)を一定の限度内で補償するものです。したがって、日当は、裁判員としての職務の対価(報酬)ではありませんので、日当と賃金の両方を受け取ることは問題ないとされています。
 また、就業規則などにおいて、法で定める年次有給休暇とは別に設定した裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合に、裁判員として受け取った日当を会社に納付させることは、不利益取扱いに該当する可能性があります。ただし、裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合に「1日分に相当する賃金額と日当に相当する額との差額を支給する。」というような賃金の扱いを定めた特別の有給休暇制度にすることは問題ないと考えられます。



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