2012年12月号
協会けんぽの5年収支見通し
【賃金上昇なければ、保険料率は最大11.5%に】
全国健康保険協会は11月2日、協会けんぽ(医療分)について、平成25年度から5年間の収支見通しを発表しました。
協会けんぽに対する国庫補助率が引き上げられないなど現行制度のままであれば、平成25年度の全国平均の保険料率(現行は10%、労使折半)は10.1%になるとしています。
一方、5年収支見通しでは、保険料収入のもととなる加入者の賃金上昇率を0%とした場合は、5年後の平成29年度の保険料率は11.2%。賃金上昇率が過去10年の平均であるマイナス0.6%で一定とした場合は、保険料率は最大で11.5%になり、いずれも大幅に増加すると試算しています。(下表参照)
また、保険料率を現行のまま据え置くと、平成27年度には準備金(積立金)が枯渇し、平成29年度末での累積赤字は最大で2兆3,700億円まで膨らみ、制度が持続できなくなる危険水域にまで達するものとみています。
協会では、平成25年度の概算要求において、国庫補助率を現行の16.4%から法定の上限である20%へ引き上げることなどを要望。実現すれば保険料率は最大で11.2%に抑えられるとしていますが、保険料率引き上げによる加入者や事業主の負担増は避けられない状況となっています。
保険料率(全国平均)の試算
制度現状維持のケース(国庫補助率16.4%、後期高齢者支援金の1/3を総報酬按分、準備金の取り崩しなし)
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平成26年度 |
平成27年度 |
平成28年度 |
平成29年度 |
賃金上昇率 |
0.8% |
0.8% |
1.05% |
1.05% |
均衡保険料率 |
10.3% |
10.5% |
10.7% |
10.8% |
賃金上昇率 |
0% |
0% |
0% |
0% |
均衡保険料率 |
10.4% |
10.7% |
10.9% |
11.2% |
賃金上昇率 |
▲0.6% |
▲0.6% |
▲0.6% |
▲0.6% |
均衡保険料率 |
10.5% |
10.8% |
11.1% |
11.5% |
(ニュース)平成23年度賃金不払い残業の状況
【是正支払い、1企業平均1千万円を超える】
厚生労働省はこのほど、平成23年4月から24年3月までの1年間における賃金不払い残業(いわゆるサービス残業)について労働基準法違反で是正指導を受け、1企業で100万円以上の支払いが行われた事案の状況をまとめました。
是正の対象となったのは1,312企業で、前年度に比べて74企業減りましたが、支払われた割増賃金の合計額は145億9,957万円で、22億7,599万円増加しました。
この結果、1企業の支払額の平均は1,113万円。労働者1人当たりでは12万円となっています。
(ニュース)厚生年金基金制度の段階的廃止案
【基金から他の企業年金への移行を支援へ】
厚生労働省は11月2日、厚生年金基金制度を10年かけて段階的に廃止する改革案を社会保障審議会年金部会に示しました。
同改革案では、中小企業の企業年金を維持する観点から、厚生年金基金から他の企業年金への移行を支援するため、現行の確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)の枠組みの中で、できる限り制度運営コストが低く、また、企業の追加負担が少ない企業年金の選択肢を増やすことや、単独ではDBの設立が困難な中小企業が、基金の解散の際に保有資産を事業所単位で既存のDBに移換し、簡易な手続きで加入することができる仕組みを新たに導入することなどが盛り込まれました。
また、厚生年金代行部分の資産不足の問題については、全額返済しなくとも解散を認める特例を設けています。
(ニュース)厚生労働省調査
【新卒採用者の1年目離職率が増加】
このほど厚生労働省は、新規学卒で就職した若者が3年以内に離職した割合を公表しました。
平成23年3月の新卒者が1年目に離職した割合は、大学卒が14.3%、短大等卒が19.7%、高校卒が20.8%などとなっていて、22年3月の新卒者と比べていずれも増加しています。
また、21年3月の新卒者が3年以内に離職した割合は、大学卒が28.8%、短大卒等が39.3%、高校卒が35.7%で、前年の新卒者と比べるといずれも減少していますが、23年3月の新卒者の1年目離職率が高くなっていることから、今後は3年以内の離職率についても高くなることが懸念されています。
(ニュース)平成23年労働安全衛生特別調査
【「メンタルヘルス不調で休業、退職者がいる」9%】
厚生労働省がまとめた「平成23年労働安全衛生特別調査」によると、10人以上の常用労働者がいる事業所のうち、平成23年10月31日時点で過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1ヵ月以上休業または退職した労働者がいる事業所は9.0%で、22年に比べて1.7ポイント上昇したことが分りました。
また、メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所は43.6%で、19年に比べて10ポイント上昇し、規模が大きいほどその割合が高くなっています。
(安全・労働衛生)
職場の安全&衛生
【年末年始無災害運動】
【年末年始の災害】
年末や年始は何かとあわただしく、災害が起きやすい時期だとされています。そのようなことからこの時期に焦点を当てて、災害を発生させないようにする取組があります。今回はその取組を紹介して、年末年始を無災害で乗り切れるようにしていきたいと思います。
【年末年始無災害運動の趣旨】
この取組は、「年末年始無災害運動」と言い、働く人たちが年末年始を無事故で過ごし、明るい新年を迎えることができるようにという趣旨で、昭和46年から厚生労働省の後援により、中央労働災害防止協会が主唱する運動です。
ところで、現在の労働災害の発生状況をみると、緊急事態となっています。それは、実に33年ぶりに平成22年23年と2年連続災害が増加しており、今年に入ってもこの増加傾向には歯止めがかからず、この傾向が続けば3年連続増加という極めて憂慮すべき事態も想定されているからです。
このような状況を打開するためにも、災害の起こりやすい年末年始は特に災害防止のための特別な配慮が必要となります。
【実施期間とスローガン】
実施期間は、平成24年12月15日から平成25年1月15日までとなっています。そして、平成24年度のスローガンは「あせらず 無理せず 油断せず 無事故でつなぐ年末年始」となっています。
【事業場が行う個別実施事項】
この時期特に各事業場で実施すべき事項は、以下のとおりとされています。
(1)経営トップによる安全衛生方針の決意表明
(2)リスクアセスメント及び労働安全衛生マネジメントシステムの積極的な導入定着
(3)メンタルヘルス対策・過重労働対策の推進
(4)KY(危険予知)活動を活用した「現場力」の強化と5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)の徹底
(5)非定常作業における労働災害防止対策の徹底
(6)機械設備に係る定期自主検査及び作業前点検の実施
(7)安全衛生パトロールの実施
(8)火気の点検、確認等火気管理の徹底
(9)はさまれ・巻き込まれ災害の防止対策の徹底
(10)交通労働災害防止対策の推進
(11)東日本大震災に伴う復旧・復興工事における労働災害防止対策
(12)化学物質管理の徹底
(13)健康的な生活習慣(睡眠、飲酒)に関する健康指導の実施
(14)インフルエンザ等感染予防対策の徹底
(15)安全衛生旗の掲揚及び年末年始無災害運動用ポスター、のぼり等の掲示
(16)その他安全衛生意識高揚のための活動の実施
【運動の実践】
この実施事項を見ると、非常に多岐にわたっていて、自分のところではとても全部は取り組めないと思ってしまう会社も出てくるのではないかと思います。また、業種によっても地域によっても各社それぞれ状況は異なると思います。
そこで、自分の会社に本当に必要な事項を重点的にピックアップして、上記の実施事項の中で自社でも実施してみようと思う事項があれば、是非実践してみてください。この運動の目的である年末年始の労働者の安全を願い、新年のよいスタートを切るためにもお勧めします。
(労務管理)トラブル回避の対応術
【元請会社から従業員名簿の提出を求められたら】
事例
当社は元請会社での構内作業を請け負っていますが、このたび安全管理のため、元請から作業に従事する当社従業員の名簿の提出を求められました。
住所などの個人情報も含んでいますが、本人に断らずに提出しても問題はないでしょうか?
個人情報保護に関するガイドライン
雇用管理に関する個人情報については、「個人情報保護法」に基づくガイドライン(「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」平成24年厚生労働省告示第357号)において、事業者が適切に取り扱うように求められています。
同ガイドラインは、顧客情報や従業員情報など、あわせて5,000人分を超える個人情報を事業活動に利用している事業者が対象となっていますが、5,000人分を超えない個人情報の取扱いをめぐるトラブルを防止するために、同ガイドラインを参考にして取り組むことが望まれています。
個人データ第三者への提供
氏名や住所、電話番号など特定個人を識別できる情報をデータベースなどから記憶媒体にダウンロードしたり、紙面に印刷したりしたものを「個人データ」といいます。
事業者は、法令に基づく場合や、生命、身体または財産の保護のために必要があるなど一定の場合を除き、原則として、あらかじめ本人の同意を得ないで、こうした個人データを第三者に提供してはならないとされています。
しかし、本人の求めに応じてその本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、以下の4項目をあらかじめ本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置いている場合には、本人の同意を得なくても個人データを第三者に提供できるものとされています。(いわゆる「オプトアウト」といいます)
①第三者への提供を利用目的とすること
②第三者に提供される個人データの項目
③第三者への提供の手段又は方法
④本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止すること
この場合の「本人が容易に知り得る状態」とは、継続的な方法により、本人が知ろうとすれば時間的にもその手段においても簡単に知ることができる状態をいいます。
たとえば、本人が定期的に閲覧すると想定されるウェブ画面において、継続的に掲載する場合や、企業内に広く頒布されている刊行物において、定期的に掲載する場合などがその状態にあるものとされます。
今回のケースも原則として個々に同意を得れば問題はありませんが、上記の4項目について、直接通知するか、または容易に知り得る状態に置いてあれば、同意は得なくても良い事になります。
第三者提供に当たっての留意事項
また、個人データの第三者への提供に当たっては、提供先に対して、漏洩や盗用(目的外の利用を含む)をしないこと、バックアップ以外の複写などをしないことを通知するとともに、個人データの保管期間、管理方法、利用目的達成後の個人データの処理(返却または提供先における破棄・削除)の方法を明確にすることが求められています。